へっくん日記

勉強したことまとめます

抗菌薬の全体図

こんにちは。
歩道を自転車で走れる人はアイサイト的な能力を持ってる超人類だと思ってるへっくんです。
#自転車素人

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抗菌薬の概要
抗菌薬は細菌の特定の構造に結合して作用します。作用の仕方は細菌の生存や増殖に必須の成分の合成を阻害するか、構造物の破壊です。作用部位は外側(細胞壁、細胞膜、外膜)と内側(タンパク質、核酸葉酸の合成系)に分けられます。作用部位からこの細菌には使えない、という抗菌薬がありますね。外膜を対象とする抗菌薬はグラム陰性菌にしか効きませんし、細胞壁を対象とする抗菌薬は細胞壁を持たないマイコプラズマには効きません。

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また、抗菌薬は全てが菌を殺してしまうわけではなく、菌の増殖速度を抑えるだけのものもあります。これを静菌的といいます。タンパク質合成阻害薬のほとんどが静菌的です。殺菌的な抗菌薬には、濃度を高くするほど効果が高くなるもの(濃度依存的)と濃度を高くしても一定の効果しか発揮しないもの(時間依存的=投与回数を増やすと効果増)があります。前者の代表がキノロン系薬とアミノグリコシド系薬で、後者の代表がβラクタム系薬とグリコペプチド系薬です。菌の外側を壊す系の薬はちょっと穴が開けば十分ってことだと思います。

抗菌薬が感染部位に届くのかも重要です。バイオアベイラビリティと細胞内移行性、組織移行性の3つの指標があります。バイオアベイラビリティとは、薬を内服した時にどのくらい生体内に取り込まれるか(腸から吸収されるか)という指標です。静脈注射した時を100%と考えます。この値が高いほど内服に向いています。細胞内移行性は血中から細胞内にどれくらい移動しやすいかの指標です。組織移行性は細胞内移行性に加えて血管から薬物がどれくらい出てきやすいかの指標です。

特にバイオアベイラビリティが高いのはキノロン系薬、マクロライド系薬、テトラサイクリン系薬です。この3つは細胞内移行性も高いので、細胞内増殖菌に効果が期待できます。一方、バイオアベイラビリティが低いのはグリコペプチド系薬とアミノグリコシド系薬です。細胞内移行性も低いです。どちらも名前にグリコがついてるので覚えやすいですね。

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さて、人類はこれまでこんなにいろんな種類の武器を作ってきましたが、感染症を完全になくすことはできていません。薬の効かない耐性菌が現れるからです。ここからは細菌の耐性機序を見ていきましょう。耐性機序は4つです。
①薬剤の分解、修飾 ②自身の変化 ③薬剤の取り込み量低下 ④薬剤の排出
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①薬剤の分解 
薬が菌の標的部位に辿り着くまでに分解、修飾することで薬を不活化します。βラクタム系薬を分解するβラクタマーゼや、アミノグリコシド系薬の修飾酵素が代表例です。

②自身の変化
抗菌薬を変化させるのではなく、抗菌薬の標的部位を変化させることで薬が機能しないようにします。代表例はキノロン系薬の標的であるDNAジャイレースの変異です。DNAジャイレースはDNAトポイソメラーゼⅡともいい、DNAのねじれを解消するためにDNAの切断、再結合させています。キノロン系薬はDNAをねじれたままにして合成できなくするんですね。

③取り込み量低下
グラム陰性菌の外膜にはポーリンという取り込み口があり、ここを通って外から栄養を取り込んでいます。抗菌薬もポーリンを通過します。菌は害を感じるとポーリンの透過性を低下させたり、ポーリンを減らしたりして抗菌薬を取り込まないようにします。

④薬剤の排出
排出ポンプと呼ばれる構造によって菌にとって有害なものを外に吐き出します。エネルギーを使いますが、複数種類の抗菌薬を排出するポンプもあります。そのようなポンプを持つと複数系統に耐性となります。

では、これらの耐性はどのように手に入れるのでしょうか。緑膿菌アシネトバクターがアンピシリン耐性を標準装備しているように菌がもともと持っている耐性を一次耐性といい、後から獲得する耐性を二次耐性といいます。耐性を獲得する方法は二つです。

一つは標的を変化させること。キノロン耐性は標的のDNAジャイレースをコードする遺伝子に変異が起こり、薬が結合しなくなることで得られます。

もう一つは耐性遺伝子を手に入れることです。耐性遺伝子の多くはプラスミドにコードされています。プラスミドは染色体外の二本鎖環状DNAで、生存に必要なわけではありませんが耐性遺伝子などのお助けアイテムを運びます。菌は状況に応じてプラスミドを取り込み、プラスミドの遺伝子情報が発現することで耐性能力が得られます。一つのプラスミドに複数の耐性遺伝子がコードされている場合もあります。しかも、一度手に入れると増殖しても次の世代に引き継がれます。さらに異なる菌種の間でもやりとりすることができます。このような耐性機序の代表がβラクタム耐性やアミノグリコシド耐性です。

 

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細菌の生き残り戦略はすごいですね。
次回からそれぞれの抗菌薬を細かく見ていこうと思います。

またね